春摘みのお茶が高いのは「テアニン」が多いせい、らしい
最近お茶関連について色々調べていたんですが、「茶道学大系」という本がありまして、お茶や水に関しての色々な研究が載っておりました。
平成12年の本なので、令和となった今とは違う結果もあるかとは思いますが、今のところ研究や具体的な数字が載ったものがこれしかないので、紹介していこうかと思います。
まあ、茶道ということで緑茶に関しての話がほとんどではありますが、所々に「紅茶やウーロン茶でも○○である」とかも書いてあるので参考にはなるかと(同じチャノキですもんね)。
ということで、初回は長年疑問に思っていた「なぜ春摘み(1番茶)のお茶は高いのか?」というお話を。
春摘みのお茶はうまみ成分のテアニンが最も多い
テアニンとはお茶にのみ含まれていて、血圧を下げる等の健康効果がある上にうまみ成分も担っています。
緑茶の場合、アミノ酸(テアニンとかグルタミン酸)は4〜5月の春摘みは乾物換算で4%、5〜6月の夏摘みは1%、7〜8月の3番茶は0.7%になるそうです。
春摘みではアミノ酸総量(つまり4%)の60〜70%がテアニンですが、3番茶では(0.7%の)30%程度まで減少していたとのこと。
つまり、春摘みは圧倒的にテアニンが多いということですね。
これは加工する前のチャノキの話なので、種は違えど概ね同じのはず(樹の質はあると思いますが)。
また
この百年間にわたって窒素施肥量が増大してきたのは、旨味成分のテアニンが多いほど高級茶であり、窒素施肥量の多いほどテアニン含有量が高まるということが明らかになってきたからである。
茶葉中のテアニンの含有量は施肥前は他のアミノ酸と比べて多くはないが、施肥後は急激に増加することが報告されている。一方根では施肥前でもテアニンは他のアミノ酸と比べ多く、施肥後はさらに増加する。覆下栽培によって遮光処理をすることによっても芽の中のテアニン量は十日位で倍近くになる。
ただし、
一番茶新芽の調査では、ある限度を超すとテアニン含有量は頭打ちとなり、それ以上ではアルギニン、グルタミン、アスパラギン等のアミド類が大量に集積するという。
つまり、テアニンが多いことが高級茶かどうかの指標になっており、また窒素肥料を与えればテアニンは増えるものの、その量には限界値があると。
しかも窒素肥料の与えすぎは地下水や土壌の汚染に繋がるようで(品質向上のプラスになるような量の調査が進行中と書いてありますし)、そこからさらに増やした場合は新芽の成長が阻害されるという文もあいまって、「テアニンは確かに多くはなるんだけど、トータルではプラスになってない」とも読み取れるような記述もあるので、与えれば与えるほどいいというわけではなさそうですね。
テアニンが増える=渋くなる?
次に気になったのが「カテキンの生成にテアニンが使用される」という点です。
カテキンというのはタンニンの最小単位のことを指すそうで、研究ではカテキンとタンニンは同じように扱っています。
エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートの4つが大体お茶の健康成分だそうですが、これらはタンニンと言ってしまえるそう。
この4つは甘みがあったり、いろいろな味がしたりとそれぞれ特徴があるんですが、共通して言えるのは「どれも渋みと苦みを含んでいる」ということで、簡単に言えばカテキンが多ければ多いほど苦く、渋いと。
で、どうやらカテキンを作るのにテアニンが使われるようで、テアニンの多いお茶=たくさんカテキンが作られるようです。
つまり、春摘みのお茶はテアニンが多いからうまみも濃いが、同時にカテキンも多いので苦みと渋みも濃い、と。
なるほど、ダージリンのファーストフラッシュが渋いのも納得ですね…
ただ、カテキンの代謝に使われるからテアニンが多いほど渋くなるのであって、純粋に茶の抽出液の中にテアニンが多いと苦渋味を抑える効果があることが分かっています。
とすると、多くのファーストフラッシュはテアニンが思ったより少ないのか、それとも…?
まあ、カテキンを補給するのに都合がよいことは間違いなさそうであります。
ちなみに、どの茶葉を使ったかは不明ですが、単純なカテキンの量は紅茶の方が緑茶の約2倍だそう(他の実験ではセイロンを使っていたのでディンブラとかかな)。
紅茶はやっぱり渋いですもんね。
まとめ
- 春摘みはうまみ成分であるテアニンが最も多い
- テアニンはカテキンの生成に関わっているため、テアニンが多いほど苦み、渋みも増す
- 短めの時間でも苦み、渋みの出るお茶はテアニンやカテキンの補給に適している
ということでした。
やはり、健康効果や風邪予防を期待してお茶を飲む場合は渋いお茶を飲むのがいいようですね。
また、春摘みのお茶のテアニン量がどうかは不明ですが、かなり渋みが強いことだけは紛れもない事実なので、選ぶ際はそのへんに留意していただければよろしいのではないでしょうか。
参考までに。