マリアージュフレールのマルコポーロが苦手なのは「香りがよすぎる」から?
マルコポーロがおいしくない!という意見がちょくちょく見られるんですが、それはマルコポーロの香りがよすぎるからかもしれないぞというお話を、「夢はボトルの中に」という本にあったエピソードをもとにご紹介します。
この本は、いつかおいしいストレートティーを飲める紅茶屋みたいなのをやりたいなー、と思って何年か前になんとなく参考に買ったんですが、主人公であるオネストティーがジャワティーみたいなストレートティーかと思いきや砂糖とかハーブを入れた商品だったので、参考にならないかな?と数回読んだきりでした。
が、ちょっとそのビジネス的観点といいますか、「アイデアを盗んでやろう」的な考えからいったん離れて読んでみると全く違う発見があるものですね。
マルコポーロの見た目・雰囲気から似た味を期待してしまう
本の内容は著者のセス・ゴールドマンとバリー・ネイルバフ(イェール大学の大学院で、セスが学生、バリーが教授)が作ったオネストティーという商品の、成功や経験をコミック形式で知ることができる本で、ハーバード・ビジネススクールのケーススタディにも選ばれたそうです。
オネストティーというのは「世界一正直な紅茶」でありまして、人工甘味料や砂糖を可能なだけカットし、ちゃんと茶葉を蒸らす・煮出すことに重きをおいて作られたミドルカロリーの紅茶飲料です。
当時アメリカにはハイカロリー飲料とダイエット・ローカロリー飲料しかなかったそうなんですが、その間にうまくおさまる商品(しかも健康飲料)として登場しました。
日本未上陸だそうなので気軽に買えないのが残念です。
では、本題に入りましょう。
オネストティーが発売される以前からアメリカでは「スナップル」という紅茶飲料がありました。
これも日本では売ってないらしいですが、めちゃくちゃ甘いらしいです。
なんでも500mlに角砂糖10〜15個ぶんも入っているらしく、体に悪いと言われているコーラより若干少ない?くらいの激甘ハイカロリー紅茶飲料だそうな。
で、いざスナップルとオネストティーが同じ店に並ぶと、「ボトルが似ているため、スナップルと同程度の甘さを期待した消費者は裏切られた気持ちになるようだ」という意見が出たそう。
オネストティーは500mlに砂糖スプーン1杯、多くても2杯だそうなので、そりゃスナップルを期待して買った人は驚きましょう。
で、これはまずい!という話になり、セス達は「水のかわりだと思えば期待を裏切らないだろう(そこを理解してもらおう)」という結論を出しました。
オネストティーが高級版スナップルやスナップルのレパートリーと思われていた(青の洞窟と青の洞窟GRAZIAみたいな?)のかは不明ですが、我々も似たような商品から味をイメージしてしまうことはありますよね。
赤い缶に白い英字が書いてあるとか。
分かる話であります。
で、その後オネストティーは隆盛をきわめるわけですが、もしかしてマリアージュフレールのマルコポーロも「オネストティーとスナップルの構図」と同じようなことが起こっているんじゃなかろうか?と。
どういうことかというと、マルコポーロは控えめに言ってとてもいい香りですが、普通に熱湯というか、広く知られるやり方でいれると「結構強めの渋みの後にほんのりミックスジュースのような香り」がします。
字面だけでも実におぞましい飲み物でありますが。
つまり、「香りをかいでミックスジュースのようないい香りがする!→似た商品を類推・期待する→甘くないし渋い!おかしい!」となるのではないかと。
ミックスジュースだと思ったら色だけ似せた抹茶だった、みたいな。
マルコポーロや紅茶の味を事前に予想するのは難しいと思うので、缶を開けたときの香りがそのまま乗った紅茶を期待すると、大体の人の期待していたものとは違う可能性も高くなりましょう。
まあ、「砂糖が入っていないにも関わらず甘く、その香りもふつうのジュースの比ではない」なんてお茶は他にないでしょうから…。
それが紅茶をはじめフレーバーティーの魅力でもあるんですが、マルコポーロではそれが悪い方に働いてしまったというか。
…。
マルコポーロの香りだけを味わってみよう
ということで、ここからは「じゃあマルコポーロはどう飲めばいいのか?」というお話を。
渋くなってしまう点についてはいつも通り水出しにしてもらえれば結構なので、「やっぱりマルコポーロの香りは苦手だ…」という方に。
マルコポーロ自体は水出しにすれば茶と香りの合致した非常においしい紅茶になるんですが、あの香りに少しでも渋みがあることに耐えられない方もいるかと思います。
そうでなくとも、いきなり失敗したら嫌だな、とか。
そんな方におすすめなのが
- 先に熱湯で少しだけ抽出した茶葉を水出しにする
という方法です。
これは他の香りが強いフレーバーティーでもある程度有効なやり方で、洗茶と呼ぶことにしています。
「渋みが出にくいやり方である水出し紅茶」と比べると
- 水出し:渋みは出にくいが、茶の味もまあまあ出る。うまさはこちらの方がおそらく上
- 洗茶:香りも薄くなるが茶の味も非常に薄くなるので、相対的に香りを味わいやすくなる(時間や量を調整すれば香りつきの水みたいにもできる)
という感じでしょうか。
やり方としては、
- 規定のマルコポーロをポットに入れる
- 沸騰した湯を注いで1〜2分抽出する
- その後ポットに残った茶をどこかへ移し、残った茶葉にエビアンか水道水を注いで水出しにする(どちらにするかはお好みで)
- 半日〜24時間冷蔵庫に入れておけばOK
といった具合です。
マルコポーロの価格からすれば結構もったいないやり方ではあるかもしれませんが、かなり飲みやすくはなると思います。
マルコポーロが口に合わないのは香りのせいではなく茶の苦みが原因であることが多いので、意外とすんなり受け入れられるかもしれません。
もらっても消費できなくて困っている人も多いようですし、捨てるよりはマシかと…。
余談ですが、お中元とか贈答用のマリアージュフレールの詰め合わせなんかが結構売れているのを見ると毎回思うんですが、もらった人は、きっと紅茶に対してあまりいいイメージを持たないですよね…。
「いや!マルコポーロは熱湯でも十分おいしいよ!」と思う方は、ぜひ、粉末の抹茶を溶かす液体を水からフルーツジュースに変えて飲んでみてください。
香りの質や糖分の有無等の違いはありますが、実際に飲んでもらえば、「おいしいから」ではなく「渋みや苦みに慣れているから」飲めてしまうことが分かるかと思います。
が、そんなことをせずとも水出し紅茶にすればマルコポーロは見違えるようにおいしくなってくれます(水道水の水出しは香りが残らないのでNG)。
また、プレゼントする際はぜひ一緒にエビアンもお贈りください。
まとめ
- マルコポーロは水出し紅茶がオススメ
- エビアン:軟水か水道水=1:1で200mlあたりに茶葉3gか大さじすりきり1杯ずつ。抽出時間は冷蔵庫で24〜48時間
- それでもマルコポーロが合わなければ、熱湯で1〜2分抽出した後に水出しにしてみるのもアリかも
というお話でした。
結構いろいろな方がマルコポーロを「メインは熱湯だけど、水出しにするものいいよ」とオマケ程度に書いているんですが、むしろ熱湯で飲むほうが間違っているのでは?と思うくらいのお茶であります。
好みもあるのであまりとやかく言えないですが、私のようにお茶は好きだけど苦いお茶が嫌いな人間もいると思うので…。
苦いお茶が嫌いというか、苦い・渋いと高いお茶も安いお茶も同じような味になってしまうのが嫌なんですよ。
もし「どんなお茶も味は似たようなもので、その微妙な差を感じとれるのがツウ」みたいなのが真理ならば紅茶という飲み物はぼったくりのオンパレードなわけですが、決してそんなことはなく、いれ方次第で値段に違わないおいしい物が作れます(大体は)。
なので、このマルコポーロの水出しをきっかけに「紅茶は分かる人にしか分からない(レビューを見るとそういうコメントが多いような)」みたいなイメージが少なくなることを祈っています。
むしろ、かなり分かりやすい紅茶であります。
「夢はボトルの中に」のためになるお話とか
それでは最後に、書籍の中でおもしろかった話をいくつか。
砂糖はグラス1〜2杯が適量らしいぞ
アイスティーに砂糖何杯くらいが適当か実験してみたそうなんですが(あくまでその場にいた人の判断ですが)
- 0杯:7人
- 1杯:20人
- 2杯:15人
- 3杯かそれ以上:4人
だったそう。
グラスの大きさは書かれてないですが、絵を見る限り300mlくらいは入りそうな物を使っているのでわりと控えめ?ですかね。
まあ、大学院の授業での実験なのでより健康志向の高い者が多かったのかもしれませんが、思ったより砂糖の量が少なくてもみんな満足なんだなーという感じでした。
ちなみに市販品は500mlにスプーン12杯ぶんの砂糖が入っていたとか。
味の変化としては
- 1杯:苦みがなくなる
- 2杯、3杯:少し甘くなる
- それ以上:効果が減りはじめる
とのこと。
「そういうのが好きな人もいるかも」と思わせよう
本には彼らが経験した様々な失敗について書かれているんですが、
人間はばかなことをする。それは人の常といってもいい。顧客の問題を解決する方法を考えなければならない。商品の売れ行きが良すぎていつも品切れを起こしている小売店のバイヤーをクビにしたくなる。だが、それで売上が上がるわけではない。大きなサイズの冷蔵ボックスを店舗に置けばいいのだ。
バイヤーを理解するのは思ったほど簡単ではない。バイヤーは最終消費者ではない。流通業者であり小売店の商品責任者だ。私たちが売り込む相手は彼らだ。彼らは経験豊富でたいてい批判的だ。成功の鍵を握っているのは自分だとそれぞれが思い込んでいる。その上、甘さ控えめな飲料を欲しがる消費者などいないと信じ切っている(ある大手チェーンのバイヤーはモルモン教で紅茶類を飲む習慣がなく、オネストティーとライバル商品の違いをなかなか理解できなかった)。
オネストティーはこういう人たちには向かない商品だった。取締役会と営業チームはもう少し大衆路線寄りを推し、9〜17キロカロリーだった商品を30〜40キロカロリーに軌道修正した。それでもバイヤーは気に入らなかったが、そういう飲料を好きな消費者もいるかもしれないと思わせることはできた。
と。
私なら「こんなの売れないよ」と言われたら、セスやバリーのようには考えられない自信がありますね…。
しかし、確かに私も確固たる理由なく、なんとなくおいしそうだと思った程度の理由で買うことはよくありますので、バイヤーや批評家の予測が外れまくるのも分かります。
「バイヤーは最終消費者ではない」というのは、断られても簡単に諦めてはいけない理由の1つになりそうですね。
ボトルの形状1つでイメージダウン
これは個人的な感想ですが、直接消費者に語りかけるのが難しい場合、やはりイメージで判断されやすい問題があるみたいですね。
例えば
- コカ・コーラと提携すると自然食品店との関係維持が難しくなる
- 凹みのある欠陥ボトルが1%あった場合99%は大丈夫だと思うかもしれないが、小売店の棚には凹んだボトルが残りやすく、すぐにディスプレーの20%以上を占めるようになり、消費者は欠陥商品だと見なし始める
- プラスチックの使用量を削減するため軽量ボトルを使うことにしたが、型崩れの原因にもなった。形状を保つためにボトルの底に窪みを入れたが、内容量をごまかすためだと誤解する消費者もいた(一時的にポストイット型の注意書きをしたラベルにし、その後ボトルの形状を変えた)
など。
- 体に悪い砂糖水を平気で売る輩=悪、健康飲料を売る=善と解釈すると矛盾したように(マッチポンプのように)感じるが、関係はない
- 何十万個とあるボトルの欠陥を0にするのは難しいが、故意ではない
- 形状が変わったら量が減った…というケースが多いためそれに当てはめてしまう
と、説明されれば分かることでも、パッと見るとそう思ってしまわなくもないなと。
いろいろと学びの多い一冊でした。
ゆったりと水出しのマルコポーロを飲みながら、「オネストティーもこんな感じの味なのかな?」と読んでみるものいいかもしれませんね。
Amazonだと1.3倍くらいするので、マリアージュフレール公式からぜひ。