小話:玉露の適性な湯量は60mlらしい/素晴らしい緑茶ミルクティー/テアニンは味が薄いらしい
ちょっと短めのお話を。
玉露の適性湯量は1杯60ml!
茶道学大系に「標準的なお茶の淹れ方」という表があったんですが、そこで示されていた玉露のお湯の量が衝撃的でした。
表によると
- 玉露 上級:茶葉10g、湯量60ml、湯温50℃、150秒
- 玉露 並級:茶葉10g、湯量60ml、湯温60℃、120秒
- 煎茶 上級:茶葉6g、湯量170ml、湯温70℃、120秒
- 煎茶 並級:茶葉10g、湯量430ml、湯温90℃、60秒
- 番茶:茶葉15g、湯量650ml、熱湯(100℃)、30秒
- ほうじ茶:茶葉15g、湯量650ml、熱湯(100℃)、30秒
とのこと。
玉露お湯少なすぎませんか笑
私がよく参考にしている茶業研究報告でも「40%以上の水分を茶葉が吸収するため、液量がいくらも得られない」と書いてあるくらい。
そのため実験の際は6g80mlや3g200mlにしたそう。
美味しいには美味しいんでしょうけど、60mlか…
いや、茶葉がお湯を吸うので下手をすると30mlくらいに…
これはお茶の名産地では常識なんでしょうか?
参考までに、伊藤園の推奨する淹れ方は茶葉6g、湯量100ml、湯温60℃、2分。
それでもかなり少ないですよね。
「前に飲んでみたけど、玉露って言うほどでもなかったよ?」という人は、少ない湯量で試してみては?
緑茶のミルクティー
以前に緑茶、特に煎茶はビタミンCとかが多い!という話をしたんですが、挽いて飲む以外でいい方法は緑茶+油脂だそうです。
味はまあ、モノによるとは思うんですが、健康面に関して言えばミルクで煮出した緑茶がいろいろなビタミンが取れてよいそう。
自宅で煎茶を飲む際はミルクで煮出すとかですかね?
前に紹介した磚茶(たんちゃ)もミルクで煮出すそうです。
ちなみに紅茶が入ってくる前のイギリスでは中国から来た緑茶しかなかったため、昔は緑茶ミルクティーが普通だったそうです。
ただ、現在紅茶用や烏龍茶用とされている海外のチャノキから作った当時の緑茶は、アミノ酸等のうまみ成分が今の下級煎茶以下でタンニンは倍近く含まれていた(+製茶技術も今より低かった)らしいので、我々の思う緑茶とは程遠い物だったかもしれません。
現代でもそれは同じで、海外産の緑茶はあまり美味しくないそう。
やっぱり日本茶と言われるだけはありますね。
また、これは茶道学大系ではないですが「輸送中に発酵したらしいけど、本当に船の中ってそんな大量の茶葉を発酵させるほどヤバい環境だったの?」とか「コーヒーが流行ったのは、紅茶が独立戦争や英国での過酷な生活を思い出す物としてアメリカ大陸に移った人々に敬遠されたからではないか」みたいな話もありました。
当時の英国を想像しながら緑茶ミルクティーはいかがでしょうか。
テアニンは味が薄い
テアニンはどうやら他のアミノ酸に比べて味が薄いそうです。
- テアニン(旨味、甘味):150mg
- グルタミン酸(旨味、酸味):5mg
- アルギニン(苦味、甘味):10mg
- カテキンガレート(苦味、渋味):20〜30mg
- 遊離型カテキン(苦味、甘味):35〜60mg
- カフェイン(苦味):20mg
- しょ糖(甘味):100mg
ということで、テアニンはかなりたくさん入っていないと美味しくはならないようですね。
また、1992と1993年の全国品評会で上位に入った玉露やてん茶にはアルギニンが多く、テアニン量の50〜60%程度に達する上に上位のお茶になればなるほどアルギニンが増えていたそうなんですよ。
- 1等玉露:テアニン3.52%、アルギニン2.06%。
- 2等玉露:テアニン3.60%、アルギニン1.40%。
- 3等玉露:テアニン2.95%、アルギニン1.03%。
- 1等てん茶:テアニン3.85%、アルギニン2.60%。
- 2等てん茶:テアニン3.60%、アルギニン1.99%。
- 3等てん茶:テアニン3.17%、アルギニン1.89%。
- 1等煎茶:テアニン3.67%、アルギニン1.44%
- 2等煎茶:テアニン3.48%、アルギニン1.08%
- 3等煎茶:テアニン2.98%、アルギニン1.09%
といった具合にアルギニンが結構増えているんですね。
ちなみに上記のお茶の1〜3等のグルタミン酸の変動は0.1%程度で、煎茶に至っては0.05%で、あまり影響はなさそうな感じ。
なので、(テアニンも結構増えてはいるんですが)前述の通り味が薄いようですし、はっきりアルギニンも増えているということで、とてもうまいお茶、特に玉露にはテアニンよりアルギニンの方が貢献しているのでは?という意見も見られたそう。
ただ厄介?なことに「じゃあテアニンとかアルギニンいっぱい足せばいいじゃん!」とはならないのがお茶でして。
なぜかといいますと、例えばテアニンはたくさんあれば美味しくなるのは間違いないんですが、抽出した茶にテアニンを足したところ、旨みの増加は感じられず苦渋味が減少したという研究結果があるからです。
苦渋味にマスクされていた味が見えてきて、結果的に美味しいお茶になるのではないか、とも言われていました。
が、そうすると茶の持つ糖類とか香りの質なんかが重要になってくるはずなので、樹の質が悪ければ肥料でテアニンを増やす意味がない…?という話にもなってきそう。
先程の表を見るとアルギニンは苦味にもなるっぽいですし。
また別の話をすると、テアニン(グルタミルエチルアミド)とよく似たグルタミルメチルアミドという物質があります。
これはテアニンの3分の1程度含まれているそうなんですが、旨味が強く感じのよい味になりやすいためお茶の味にとって重要であるそう(じゃあ、テアニンよりこっちが多いほうがうまいんじゃない?とか考えちゃいますよね)。
つまり何が言いたいかというと、お茶の旨味や味を決める要素は無数にあって、しかも水質や温度によってそれぞれの抽出量も変わるので、はっきりと美味しいお茶の目安を見つけるのは難しいということですね。
もうこれは美味しいお茶を1つ1つ淹れながら試すしかないかなーと。
そう思わされた次第であります。