old reliable tea

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ストレートティーについて考えるブログ

20180421162403

科学的に見る「健康効果を得られるお茶の温度」について

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私もこのブログでは紅茶を淹れる温度はどのあたりがいいのか書いていて「一番美味しいのが水出し、次が硬水3:軟水7くらいのやや熱め」という認識だったんですが、主観的なレベルではあるので、果たしてこれは正しいのか?を調べてみました。

 

たどり着いたものは残念ながら紅茶のデータではないんですが…。

 

温度が高いほど苦、渋が増すのは間違いない

ちょっと古いデータではあるんですが、茶業研究報告(1972)にて、面白いものがありました。

 

これは緑茶において、95℃、80℃、60℃、40℃でそれぞれ2〜10分まで2分刻みでタンニン、アミノ酸、カフェインがどれくらい抽出されるかを調べた研究です。

 

ちなみに下記の%の数値はどれも10分抽出した際の値(例えば、タンニンは10分経過しても40℃ならば30%くらいしか抽出されない)です。

 

それによると

  • タンニン:95℃・100%>80℃・80%>60℃・50%>40℃・25〜30%

 

  • アミノ酸:60℃・約80%(78%くらい?)>80℃・約75%>95℃・約70%>40℃・約65%

 

  • カフェイン:80℃・100%(そのためか95℃は記載なし)>60℃・約70%>40℃・約50%

 

という結果になりました。

 

分かりにくいと思いますが、要するにタンニンとカフェインは80℃以上だと激しく抽出され、アミノ酸はどの温度でもそこそこ抽出されたという感じ。

 

ここだけを見ても、一般的に言われている紅茶のいれ方は「渋みが強くなるわりにアミノ酸は大して増えてないから相対的に飲みにくくなっているかも」と言えるわけですね。

 

それぞれの特徴を見ると、

  • タンニン:時間に比例して2分ごとに5〜15%ずつ抽出されていく。高温の方がよく抽出される。

 

  • アミノ酸:それぞれの抽出温度の最終的な差が小さかった。ただし、95℃では6分、80℃では8分、60℃では6分と10分、40℃では8分がそれぞれアミノ酸の値が最高になった。

 

  • カフェイン:80℃の場合、2分の時点でほぼ100%に達し、そこからはずっと100%のまま。60℃と40℃の場合は時間に比例して2分ごとに約10%ずつ抽出されていった。

 

という感じでしょうか。

 

だいたい温度と時間が増えればタンニンとカフェインは増えるけど、アミノ酸だけは妙な変動があるんですね。

 

研究者のコメントとして

 

カテキン(タンニン)は湯温が80℃をこえないと抽出されにくいが、アミノ酸は40℃でもよく溶出され、カフェインはその中間であった。

 

先程の抽出量の値についても

 

上級煎茶を対象とした時の結果であるが、並級煎茶を対象にしても、大体、同じような傾向を示すことが認められている。

と。

 

なるほどなるほど。

 

ちなみに、この並級は数字的に見るとやや下級寄りだったので、安い煎茶でもおそらく当てはまるかと。

 

ということで、「タンニンとカフェインはなるべく抽出しないように、でもアミノ酸もほしい」といった風に欲張るなら60℃と40℃で少し長め…が良いかもしれませんね。

 

また、結論としては「苦み、渋みを避けたいなら熱湯では作らない」というのは正しいと言えそうです。

 

数値的には60℃で6分と40℃で8分くらいがアミノ酸が多く、かつタンニンやカフェインが少なめで良さそうなので、そこから±1分くらいで試してもらえれば良いかと。

 

60℃とか40℃が用意できる人はやってみてはいかかでしょうか。

 

煎茶の場合、水出しは30分か2時間

水出しについても煎茶のデータがありました。

 

それによると

  • タンニン:5分7.8%、30分20.8%、2時間28.5%、10時間41.6%

 

  • アミノ酸:5分30.4%、30分54.3%、2時間74.5%、10時間83.7%

 

  • カフェイン:5分13.4%、30分27.7%、2時間38.2%、10時間55.5%

となったそうです。

 

実験は茶葉1gに対し水100mlで行い、水温は書かれておらず冷水とだけありました。

 

また、この実験の際に使われたお茶の成分含有量は1gあたりタンニン116.1mg、アミノ酸18.4mg、カフェイン23.8mgだそうで、これは大体下級煎茶(別のデータにあった下級煎茶よりはアミノ酸値がやや高いが、並級まではいってない)と同じ数値

 

研究者のコメントによると

抽出時間30分と2時間が味がよいとする者が多く、その場合、浸出液100ml中、タンニンが24〜33mg、アミノ酸が10〜14mg程度であった。

 

ということで、30分〜2時間が「タンニンとカフェイン(苦みと渋み)がアミノ酸(うまみや甘み)の半分くらいの量なので味が良い」という感じですかね。

 

ちなみに、30分の値がどれくらいかというと、(タンニン123mg、アミノ酸38mg、カフェイン27mgの)上級煎茶を70℃で120秒抽出したものとだいたい似たような値で、そこからタンニンが10%くらい多く、アミノ酸が30%くらい少ないような感じです。

 

上級かどうかはアレですが、70℃120秒は皆さんが普通に飲んでいるお茶にだいたい近いんじゃないでしょうか?

 

つまり、煎茶は水出しで30分程度置いただけでも、普段飲んでいる茶と(数値上は)変わらないものが出来上がるんだ、と。

 

そもそも水出しに使われた下級煎茶はアミノ酸が少ないというのもありますが、結構いい数字じゃないですかね。

 

健康効果を期待するならそのくらいでも十分と言えそうです。

 

(84%は出てますが)10時間になるとアミノ酸がそこまで増えない割にはタンニンとカフェインの量が多くなっていますので、逆に言えば、少ない量でなるべくお茶の健康成分も取りたいならそのくらい長めの水出しが良さそうですね。

(私が普段推奨している紅茶の水出しは中2日ですが…)

 

まとめ

  • 温度が高ければ高いほどタンニンとカフェインの抽出量が増えるため苦み、渋みが増す

 

  • 数値的に見れば、「60℃で6分」もしくは「40℃で8分」がアミノ酸の量に対してタンニンとカフェインが少なくなる

 

  • 水出しの場合は30分と2時間がアミノ酸の量に対してタンニンとカフェインが少なくなる

 

  • 水出し茶で、だいたい普通の飲み方であろう70℃120秒に近い味にしたければ、30分は置いた方がよい

 

といった感じでしょうか。

 

紅茶の場合はタンニンが多いせいか、少し涼しいか丁度いいくらい部屋に置いといても結構苦くなったりするので、やはり冷蔵庫がおすすめでしょうか。

 

低温でタンニンが抽出されにくくなる効果は煎茶の倍タンニンを含む紅茶に特に有効そうですね。

 

まあ、お茶は単純にタンニンやアミノ酸等が多ければ多いほどうまい、というわけではないので結局は好みなんですが、まずは常温の水出し30分〜2時間で始めてはいかがでしょうか。

 

ちなみに一時期水出し紅茶の食中毒の話が出ましたが、30分水出ししただけでも普通に淹れる緑茶と同じくらいのカテキンやタンニンが出るようなので、そんなに心配する必要はなさそうですね。