うまい物は少量で満足できる!は本当か?
私もダイエットの際に結構感じていたことではあるんですが、しかし私の思い込みである可能性も否定できないので、本当にあることなのかどうか調べてみました。
満腹感のポイントは風味と充満感
人間には風味によってもたらされる、感覚特異的満腹感というものがありまして、簡単に言えば「もう十分に味わったと感じると、それ以上ほしくなくなると感じること」です。
味の特徴が記憶されたニューロンが疲れるせいでだんだん感じにくくなるそうで、「疲れる」というと大丈夫かな?と思いますが、取り立ててデメリットはなさそうです。
まあ、普段の食事で当たり前に起こっていることですからね。
で、人間の満腹感・食事への満足感というのはこの「感覚特異的満腹感」と「腹の充満感」の2つが重要だそうです。
過去にオランダで、我々が食べるのをやめるのは「腹がいっぱいになったからか?」それとも「風味を十分に堪能したからか?」という研究が実施されました。
が…
普通に朝食をとった後何度か研究室に出向き、イャフォンプラグくらいの細さの胃管を技師に挿入してもらう。
胃管は鼻孔から上に進み、のどを下り、胃に到達する。机で1時間書類仕事をしたあと、200グラムのケーキを渡される。
ただし、いつものように噛んでかまわないが、飲み込む寸前にコップの中へ吐きださなければならない。かじる、噛む、吐きだす、かじる、噛む、吐きだすを1分間もしくは8分間おこなう。
それが終了すると、技師(たぶん胃管を鼻に入れた人)がカップを回収し、中身を空け、乾燥させて重さを量り、こっそりケーキを飲みこんでいないかどうかを確認する。
噛んでいる最中には、99キロカロリー分のケーキを少量の水(100ミリリットル)に溶かしたものが胃管から注入される。吐くのと注入が終わり、ついでに胃管をにょろにょろ抜いてから、30分後にサンドイッチのランチを渡され、おなかいっぱいになるまで食べるように指示される。
はっきりいって、この噛んで吐いて管から注入されるというのは、悲惨の一言に尽きる。
被験者登録をした43名の若者のうち、自分のすることの内容が分かったとたん、参加料の支払いがあるにもかかわらず、8人が離脱した。
5人はケーキを正確に吐きだせなかったためクビに、4人は残すところあと26回という段階で、「その他」の理由で失格となった。
簡単に言えば、ケーキをたくさん噛んで風味を味わったら食う量が減るのか?を見たんですね。
味はいろいろなものに影響を受けるので、これくらいしなければ正確性はないと。
参加者のみなさん、本当にお疲れ様でした…。
結果どうだったかといいますと、ケーキを8分噛んだグループは1分のグループに加えて、サンドイッチを食べる量が10〜14%少なくなりました。
胃に注入する液体の量を増やしてもサンドイッチの量は変わらず、たくさん噛んで風味をより感じたことのみがサンドイッチの量を左右したそうです。
他の実験でも、鼻からのどの奥にチューブを挿入し、無味のスープを飲ませた際に管から様々な強さのアロマを流したんですが、香りが強く残っている間、飲む量が9%減ったそうです。
つまり、よく噛むとか、ちゃんと味付けをして風味を味わうのが、一番食べる量が少なく済むということですね。
どちらも数値としては小さいですが、多分謹製のサンドイッチやスープアロマではないと思うので、ニンニクやセロリ、クローブを入れたり、トマトペーストをふんだんに使ったりして風味を増強した料理であれば、もっと効果が期待できるのではないでしょうか?
よく満腹中枢の話なんかが出てきますがそれ以外にも、よく噛むことによって風味を感じれば満ち足りた感覚が得られるわけですね。
咀嚼が肥満防止になるというのも納得。
ちなみにこの感覚特異的満腹感は1時間以内に効果が消えることが判明しているので、「それまでに食べ物を目の前から取り去っておく」「腹8分でセーブ、後は野菜かタンパク質」等の、いわゆるセルフコントロール能力もあるといいかもしれません。
私の場合、食べた後にちょっとでも疑念が湧いた物(=風味が薄い・物足りない)は記録しておいて、店に行ったら2度と買わないようにしていました。
「安さにつられたけど、あと50円足して別のを買ったほうがよかった…」「本当はこっちが食べたいけど…」みたいに思ったら妥協して選んだ物をすぐに何かにメモします(次からは迷っても買わないために)。
どういうわけか、いざ店にいくと「でも酷評するほどじゃなかったんじゃ…?」みたいなのが湧いてくるので、そんな時に「なぜ買って後悔したか?」を思い出せるようにしておくのがオススメです。
買う量が減るのでゆっくり味わって食べるようになりますし、個々の食品にかけられるお金も増えるので結構気に入っているやり方です。
腹が減るとカロリーが増えやすい
風味とカロリーは深く結びついているという話もありまして、マギル大学が食品に対する意識的な評価と無意識的な評価がどう違うか?を調査しました。
腹ぺこのボランティアに複数の食品の写真を見せて含有カロリーを推測してもらい、その後、前頭前皮質腹内側部(食欲や食い物への評価を司る領域)の活動を測定しました。
前者が意識的、後者が無意識的な評価で、つまり我々の意識と脳は同じように食品を認識しているのか?を調べたんですね。
結果、写真を見ただけではカロリーの推測はほぼできなかったんですが、脳をスキャンしたらだいたいのカロリーを予測できていたそうなんですよ。
たとえばローソンの弁当でいうなら「豚の生姜焼き弁当は意外とカロリー低そうだよね」と口では言っていても、脳は「これは明らかにカロリーが高いぞ!」と分かっていたと。
ローソンの弁当は食べたことがなくとも、生姜焼きとかタツタ自体は食べたことがあるので、だいたいのカロリーや栄養を脳は知っているわけですね。
さらに実験では最後に全員に5ドルを渡し、今すぐ食べ物を買うなら何を食べるか?を見ました。
すると、腹ぺこボランティア自身がカロリーが高いと推測したものを買うだろうという予測とは逆に、脳が高カロリーだと判断した食品を買ってくる率が高かったそうなんですよ。
推測が当たらなかったそうなので、本当ならバラバラな物を買ってくるはずなのに、みんなだいたいカロリートップ1〜3を選んできたという感じなんですかね。
確かに、とにかくガツガツ食いたいときは魚が好きでも、焼き魚弁当とか鮭弁当を選ぶ率は低い気がします。
それに、店にいく前は特に欲しかったわけではないけど見ると食べたくなる惣菜や弁当って、意外と高カロリーなものが多いのかもしれませんね。
まあ、例が少ないんでこれもはっきりとこうだ!とは断定できないものの、腹が減りすぎてると、いつもより高カロリーな食品に手を出しやすくなる率が高いかもよ?という感じかと。
リーンゲインズなんかをしているとそんなにめちゃくちゃ腹が減ったりはしないものの、ダイエット中の方なんかはお茶や炭酸水を常に持ち歩く、心地よい空腹程度で食べ始める等を注意した方がいいかもしれませんな。
脳が忘我のギャンブラーに
ここで「脳がカロリーをたくさん摂りたいなら、なんでカロリーゼロのコーヒーとか紅茶を好きになるの?」と疑問が湧いてくるかと思います。
私もストレートの紅茶大好きですからね。
それについての答えも書いてありまして、研究によると「カフェインや辛み、苦みなどは脳にとっては価値があると判断される」からだそうです。
もちろん苦手な人もいるかと思いますが、慣れるかうまいと感じる味付けにすると、だんだんと脳がそれらの高揚感や幸福感を感じるようになってくるそうです。
度を超えた物でなければ、基本的にカフェインや辛みが含まれた食品は体にいい成分も多いですから、カロリーのないものはそうやって学習していくんでしょうね。
ただひとつ気がかりなことが。
脳は基本的に本能に忠実なわけですが、現代は祖先の時代にはなかった刺激がたくさんあります。
その最たるものが「ダイエット飲料・食品」でして、どうも脳の機能をくるわせる可能性があるそうなんですよ。
研究者いわく
甘い柑橘系の食べ物が時には高カロリーだったり低カロリーだったりすると、わたしたちが今どれだけ食べていて、いつ食べ終わればいいのかを監視しているカロリー計数器の働きをにぶらせることがある。
(みなさんは)ダイエットコークと同じように甘くて、柑橘系で、カラメル風味のする別の食べ物を味わったことがあるに違いない。
人工甘味料はカロリーが少ないゆえに、実際には甘みへの指向性や、そのほかの随伴する風味への欲求を高めてしまう可能性がある。
そうです。
人間は不定期な報酬や喜びに快感を覚え、それを「間歇強化」というんですが、特に報酬系をくるわせるそうです(快感が強くなりすぎる)。
間歇強化はパチンコやギャンブルに大きく貢献している効果で、つまりダイエットコーラ(ハズレ)が多いと、普通のコーラ(アタリ)が過度にフォーカスされてしまい、もっと欲しくなってしまうわけですね。
「いつもは0カロリーコーラだから…今日くらいは自分へのご褒美で♪」みたいなことはせずに、普通のコーラだけを飲んだほうがムダな食欲と戦わなくてよくなるかもしれません。
「思ったより飲んじゃったな。だから、明日からまた2週間、0カロリーコーラ生活!!」みたいなのもあんまりよくなさそうです。
私も普通の紅茶にプラスして、ベッジュマン&バートンやマリアージュフレールのマルコポーロ、エロスなんかを断食中に飲んでいましたが、これに下手に砂糖を入れたり、似たような香りの高カロリー飲料を飲んでしまうと、脳が快感を求めて食い続けるギャンブラーになってしまう可能性があるわけですな。
私も最近飲むのは紅茶と酒くらいで、ソフトドリンクの類は一切飲まなくなったのでそれを続けようかと思います。
まとめ
- うまい物をよく噛んでしっかり風味を感じれば食べる量は減る
- 腹がいっぱいになっただけでは、食べるのをやめられない可能性がある
- 腹が減ると、食選が高カロリーになりやすい
- ダイエット食品や低カロリー飲料に注意!
という感じでした。
自炊頻度を高めて、ケチらずスパイスやハーブ、香味野菜を使い、素材の持ち味を殺さないような低温・蒸し調理を心がければよいということですね。
「ダイエットをしたい」「家族の健康のためを思って」という方ほど、風味を意識するのがよさそうです。
ダイエットをしてほしいからと下手に味を薄くしたり、おいしくない安い豆腐やカロリーは低いが味気ない物ばかりを出したりすると、陰でジャンクフードを食べるようになったり、ストレスでタバコや酒と仲良くなってしまうかもしれません。
多少手間は増えますが、「好きな物も食べずにひたすら野菜ばかり食う」とか「とにかく低カロリーで我慢、我慢」というよりは、始めやすいかと思いますので、気になる方はぜひ。
ちなみに我が青森県でも(出ては消えを繰り返す)減塩食品は数多くありますが、その多くがあまりおいしいものではないので、風味を活かしてもらえればもっといい商品が生まれるかもしれません。
でも、加工食品になると予算との兼ね合いもあるみたいですからね。
天然の食品は400〜1200種類くらいの香りを含んでいるのに比べ、加工食品は常識的な価格の範囲だと多くて30種類くらいらしいので、やはり自炊が最強でしょうね。
ほんだしはしょっぱいので、「みそ汁にほんだし」は減塩にはやや効果があるかもしれませんが、別の問題が起きそうです。