old reliable tea

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ストレートティーについて考えるブログ

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そして、みんなやぶきたになる

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どんな緑茶を選べばよいか?は好みもあるので人それぞれなんですが、あんまり選ばないほうがいい緑茶はある程度分かっていて、その1つとして挙げられる「やぶきた」のお話を少し。

 

あんまり選ばないほうがいい理由としては、「マイノリティなのにマジョリティになってしまったから」です。

 

簡単に言えば、「緑茶というカテゴリからしたら異端で、風味が元来の日本茶からかけ離れている(甘すぎ、濃すぎ)のに、収量が多い・売るのに都合がよいなどの理由から多数派になってしまったお茶」だそうなんですよ。

 

つまり、過去に日本人が愛した緑茶とはまるで別物で、本物のお茶としての香気が薄いお茶であると。

 

「昔、横浜中華街で好きだった店はほとんどなくなり、今ではチェーン店ばかりに…」みたいな記事を見たことがありますが、それに近いかもしれません。

 

「緑茶ってなんか似たり寄ったりだなー」とか「昔みたいなお茶が飲みたいなぁ」という方や、そういう家族がいる方は「やぶきた」以外を飲んでみると思わぬ収穫があるかもしれません。

 

(この前のドラえもんが面白かったのでちょっとタイトルの参考に)

 

やぶきたの性能はすごい

やぶきたなんですが、かなりハイスペックな子でございます。

 

どのくらいかと言いますと

  • どんな風土でも根付きがよく、根や芽の出方が均質で生育が早い
  • 改植した場合、成園になるのが早い
  • 耐寒性が強く凍霜害後の回復力が強い上に生葉の収量が抜群に多い。やぶきたの生産額を100とした場合「するがわせ」78.6、「やまかい」77.3、「やえほ」77.0「ふじみどり」71.0、「在来種」37.0というくらいの多さ
  • 適採期も在来種より10日前後早く、新茶シーズンの要求にマッチして高く売れる
  • 10アールあたり「やぶきた」732キロ、在来種は645キロ獲れる

 

だそうです。

 

植物としてはかなり優秀な模様。

 

ならば弱点は、と言いますと

  • 害虫がつきやすく、香気が薄い
  • 生産性を高めるために農薬や化学肥料が使われがち

 

とのこと。

 

化学肥料を使うとお茶の味が著しく失われるそうなんですが、もともと味は濃いが茶としての香気が薄いやぶきたは、更に…という感じだそう。

 

100%と濃縮還元のリンゴジュースの違いみたいな感じでしょうかね?

 

ちなみに、一番おいしいのは人の手の入っていない山奥に生えている「ヤマチャ」だそう。

 

あまり手を加えない方がおいしい茶になるのならば、アフリカ紅茶がとてもおいしいのも納得ですね。

 

途中、「香味、香気」とありますが、おそらく甘みや渋みを香味飲んだ後に喉の奥から感じる味や純粋な香りを香気というのでしょう。

 

「青臭く甘っぽい、少しもたれるようなやぶきたの香味は…」という表現がありますからね。

 

やぶきたふうのお茶は何杯ものむ気になれないでしょう?

ちなみに著者は違えども緑茶関連の本でだいたい共通しているのは、やはり「やぶきたは緑茶本来の香りが薄い」ということであります。

 

私自身も渋い茶よりも甘い茶が好きで、紅茶のもつ生野菜に似たような甘さが好きですが、どうも緑茶は苦手でした。

 

が、それは「緑茶が」苦手というより「やぶきた」だったようですな。

 

メモメモ。

 

ちなみに香りというとよく紅茶が挙げられますが、理論上は全く手の加えられていない不発酵茶である緑茶が最も香りが強いそうです。

 

酸化すると香りの性質が自然香→タンニン香へと変化するため一概にどちらがとは言えないものの、ほとんどの場合、言うほど発酵茶である紅茶は香りが強くはないとのこと。

 

まあ、確かに飲んでいてそんな感じはします。

 

やぶきたの話に戻りますが、ある本の言葉を一部抜粋しますと

あなたが今、のんでおられる天然の茶から作ったお茶、これが本来のお茶の香味なのです。やぶきたには、それなりの大きな役割があって否定はいたしません。しかし余りに一辺倒、全国制覇ともいえる今の状況は決して望ましいものではありません。

近年の緑茶需要は次第にダウンし輸入茶もふえて茶畑が年々大幅に減っていくと聞いています。それは、青臭さくて甘っぽい、少しもたれるようなやぶきたの香味をよしとする今の日本茶の状況と、どこかで重なってはいないでしょうか。恐らく重なっていると私は考えています。

「やぶきた」ふうのお茶は続けて何杯ものむ気にはなれないでしょう。こういうお茶は大衆の心をつかめないのです。知らず知らず何杯でもつづけてのめるお茶、一口にドライなお茶といったらいいか、これが若い人ばかりでなく、今の人が求めているお茶ではないでしょうか。

ウーロン茶を始めとする中国茶、釜炒り茶、紅茶、京ばん茶、ほうじ茶などがその要求に応える飲物ではないでしょうか。

 

とあります。

 

他にも「毒々しいグリーンでないと売れない」という話も本に書いてあるんですが、「緑茶なんだからそりゃ緑色だろ」と思われるのはまあ、分かるような気もします(本来緑茶は山吹色)。

 

一応、緑茶は昔から飲まれてきたわけですけど、知ってたら「緑茶とは言うがそれは葉が緑だから緑茶であって、水色は黄色っぽいんだよ」と家族の誰かが言うでしょうし、みなが飲んでいれば気付くはずなので、「緑茶の水色が抹茶のような深緑ではなく山吹色だと気付かないくらい、日本人は茶を飲んでいない」というのが一番かな、と。

 

お茶屋さんと立ち話をしたこともありますが、何というか「いろいろ飲んだ結果やぶきたでいいかな」とか「おいしいのは知っているし、できれば飲みたいんだけど手間が…」みたいな人って結構少ないような気がしますね。

 

どうなんでしょうか。

 

ちなみに世界の紅茶事情なんかを見ていると、「何でもいいからとにかくお茶を飲んでもらおう」みたいにすると、砂糖やミルクを入れたり、薄〜く(本当に薄く)いれてスイーツやお菓子を流し込むためだけの飲物になったりしてしまいそうです。

 

まとめ

  • やぶきたはハイスペックで、味を考慮しなければかなり理想的な品種
  • やぶきたは味は濃いが、お茶本来の複雑な、リラックス効果のある香りは弱い
  • 緑茶が合わないなと思っても、やぶきた以外の品種を飲んでみては?

 

ということでした。

 

まあ、やはり日本人はお茶離れというほどお茶を飲んでいなかったのかもしれませんね。

 

たしかに「30年前の約3割ほどしか緑茶は飲まれていない!お茶離れが!」と言われれば深刻な気もしますが、茶の消費量や購入量を見ると普段売ってる100gくらいの茶1袋を消費するのに2ヶ月程度かかっている計算になるので、そもそもの消費が少なすぎるんじゃない?と。

 

毎日3gのティーバッグ1個を欠かさず飲んでも年間消費は約1キロになりますから、相当少ないんじゃないでしょうか。

 

ということで、私の口からみなさんに「もっと茶を飲め!」とは言えませんが、現在メジャーな品種は、昔から愛された日本茶とは違うものなのだ、と覚えてもらえれば結構かと思います。

 

お茶は健康にいいのでたくさん飲むのがオススメですが、私もやぶきたはそんなに飲みたくはならないので別の品種を検討してみようかと思います。