全生産量の1%にも満たない貴重な茶葉で本物の香りを 「セレクティー ケニア オレンジペコー」
今回登場するお茶
・セレクティー ケニア オレンジペコー
今回紹介するいれ方
・エビアンと軟水を使った水出し【特殊】
- 紅茶はやっぱりフレーバーが着いていた方がおいしい?
- ケニアはミルクティー用の茶葉ではあるが、全てがそうではないぞ
- エビアンとちょっとの軟水で、いつもより長めに置く
- ケニアという茶葉のオレンジペコーは全体の1%にも満たない貴重な茶である
- まとめ
紅茶はやっぱりフレーバーが着いていた方がおいしい?
私も最近フレーバーティーの記事ばかり書いているように、おいしい紅茶といって挙げられるもののほとんどがフレーバーティーなのであります。
巷のおいしい紅茶ランキング!でも上位に入っている紅茶はほぼそうですよね。
が、みなさんはおいしい紅茶ってそもそもどんなものなのか?というのを考えたことはありますでしょうか。
というのも、私もよく「紅茶の香り」などと言いますが、フレーバーティーがおいしいのは過去に食べたり飲んだりしておいしい!と感じたいい香りがついているからであって、紅茶の純粋な力によるものではないことがほとんどであります。
もちろん、茶がまずければどんなにいい香りだろうともおいしくはならないですが、やはりフレーバーティーが自然な香りで誰にでも好かれるか?紅茶との合わせ技で作られた黄金比か?言われれば決してそうではないのも事実。
私は「グレープフルーツそのものだ!」といっても、「このわざとらしい感じが苦手」という人もいますからね。
ということで、今回はフレーバーティーが飲めない・フレーバーティーじゃないおいしい紅茶ってないのか?みたいな人のために、茶の味そのものがおいしい紅茶のお話を。
もちろん純粋においしい紅茶はないのか?という方にも。
おいしい紅茶が飲みたかったら結局フレーバーティーを飲むしかない!というわけではないんだ、と分かっていただければ。
私もたまには何にも味付けしない粥が食べたくなったりしますし、ふとしたことで好みが変わったり必要になったりすることもありますからねー。
まあ、品揃えの一環として。
ケニアはミルクティー用の茶葉ではあるが、全てがそうではないぞ
まず「ケニア」という茶葉の特徴なんですが、ミルクティー・チャイ用と書かれているように
- 渋みが濃く、それでいて紅茶としての味は比較的薄めである
- 茶液自体はココア(砂糖なしのパウダーをお湯に溶いたやつ)に近いような味である
と認識してもらえればだいたい間違いはないかと思います。
「まんまココア!」というのではなく、強いて近いものを挙げるなら…といった具合ではありますが、ミルク用とされるのも当然といったような味です。
さらにケニアはほとんどCTCとして出回っていて、仮に製茶前によい茶葉だったとしても苦みが強くなってしまうためおいしく飲むのがまず不可能なのであります。
なぜかというと、CTCは茶葉を細かく砕く際に滲み出たエキス(うまみも濃いかもしれないが苦みも濃い)が乾燥して纏わりついているため、どう頑張っても茶液が苦くなってしまうからです。
カップヌードルなんかは粉末調味料が乾燥麺にくっついていますが、例えるならあんな感じですね。
そして、みなさんご存知の通り、「苦み100%うまみ100%」よりも「苦み20%うまみ40%」の方がおいしい紅茶だと感じられます。
実験でもこれは出ておりまして、苦い茶に茶の甘み成分とされているテアニンやその他のうまみ成分を後から添加したところ、平時の5〜6倍程度の濃度にしたにも関わらず甘くなったりおいしくなったりせずに苦みが減少しただけ(依然として薄い茶の方が嗜好性は上だった)であったため、苦い茶に何かを足すのは現実的ではなかったそう。
だから世の紅茶は基本的に「薄くするか」「ミルクや砂糖を入れるか」なんですね。
あれらは「紅茶をおいしく飲む方法」ではなく「おいしくない紅茶をなんとか飲めるようにする方法」ということです。
ミルクティーは世界の紅茶消費の95%を占めるそうですが、95%の意見が一致する=人間にはそう反応する(苦みを嫌う)システムがある、と見るのが妥当じゃないでしょうか。
で、特徴の薄めな紅茶をさらに苦くなるようなCTCで売っているわけですが、大抵のケニアは今まで通りミルクティーでいいんです。
「本当はもっといい飲み方があるが…」みたいにならないので、罪悪感なくミルクティーにできますから。
が、すべてのケニアがそれでいいわけではありませんでした。
エビアンとちょっとの軟水で、いつもより長めに置く
ミルクティー用とされているケニアですが、今回紹介するセレクティーのケニアだけが唯一カカオのような、ダークチョコレートのようなちょうどいい苦みに豊かな香りがあるんですよ。
「カカオのお茶ですよー」と言われても納得できるくらい(作った自分もびっくりするくらい)で、チョコレートは固形なんで違うかもしれませんが、本当にカカオ以外に例えるのが難しいくらいの香りになります。
そのカカオティーの具体的な作り方を申しますと、
- エビアン:軟水か水道水=7:3の水出し紅茶
にします。
いつもは1:1ですが今回のみ7:3で、軟水100%の水出しにするとほとんど苦みだけになってしまい、かつエビアンを入れないと甘みが出ないためこの割合であります。
じゃあ、エビアン100%がいいんじゃない?と思うかもしれませんが、それだと苦くはならないもののぼんやりとしていて、やはり軟水がちょっと入ることによって一気にカカオに化けます。
冷やし中華のタレなんかもそうですけど、ごま油を入れる前は、レシピだけ見たらまんま照焼きのタレですもんね。
それと同じで、ちょっとの差ですが、大幅に変わります。
もうひとつポイントがありまして、それは48時間以上置くことです。
いつもの水出しは24時間で普通かやや薄め、48時間で濃いめなんですが、セレクティーのケニアの場合48時間は置かないと味が出ませんでした。
エビアンが多いからですかね。
最初実験した際は間違えて3日半くらい置いてしまい、次はピッタリ48時間でやったんですが前者がベストでした。
48時間よりも前だとちょっと濃厚な普通のケニアという感じでさほどおいしい感じはなかったため、セレクティーのうまさには気付かなかったかもしれません。
間違えてよかった。
まあ、他の紅茶よりゆっくり味が出るぞ!という認識でよろしいかと。
ちなみに、セレクティーのケニアがうまかったのでもしかして…?と思って手に入れた全部のケニアを72時間でやってみましたが、このように味が変化するものはありませんでした。
もっと高いケニアだと変わるかもしれませんが、500g3000円、つまり100g600円という破格の安さでこの味が出せるのもセレクティーのケニアの優れた点ですね。
参考までに、日東紅茶が110g560円です。
ケニアという茶葉のオレンジペコーは全体の1%にも満たない貴重な茶である
そして、セレクティーのケニアが素晴らしいのは、おいしいのに加えてオレンジペコーである点であります。
紅茶系の書籍によると、紅茶消費大国の要請によりケニアのほぼ100%、アッサムの90%がCTCかティーバッグにされているそう。
つまり、(全体の生産量が多いんでそこそこの量なのかもしれませんが)オレンジペコーは全ケニアの生産量の1%にも満たない量しか作られていない、非常に貴重な茶葉ということなんですよ。
作られていないというよりはオレンジペコーのまま出回るのが、という感じですかね。
そのうちすべてCTCになってしまわないか心配です。
世界中がこのカカオのような茶を飲んでもストレートじゃなくミルクティーにしたい!というなら受け入れるしかないですが、おそらくそうではないと思いますし…。
むしろ、CTCとかミルクティーのせいでさらに紅茶の消費は低迷しているんじゃないかとさえ思います。
なぜなら、どうせミルクティーにするなら100g1500円とか2000円の紅茶を買う理由がないですからね。
1500円の紅茶と200円の紅茶を熱湯でいれて似たような味になったら、最初はともかく、2回目からはおそらく後者を買いますよね。
しかも、ミルクティーにとって大事な渋みであるタンニンは安い紅茶にも入っていますし、味のほとんどが砂糖じゃないですか。
ミルクティー用の茶葉として見れば代わりはいくらでもありますし、テイスティングや普通に出てくるいれ方では正直なところあまりおいしくはないので、後悔するか2度と買わないかのどちらかになりそうです。
私も紅茶を飲み始めて間もないころ、200g入り2500円のディンブラで似た経験をしたことがあります
ディンブラは本当にどう作っても渋いので、
- 調べたら「ストレートでおすすめの茶」と書いていたが、苦くておいしくない(これは午後の紅茶のストレートみたいなのを買わずに作れる!と勘違いしていた自分も悪いですが)
- ミルクティーにするとしても、もっと安くて似たような味の茶葉はたくさんあるため袋を見るたびに無駄遣いしたような気がする
- 調べても熱湯とミルク以外のやり方が出てこないので、いつまでもなくならない(アイスティーも結局熱湯を薄めただけですし、牛乳を飲むとお腹にくる人も多いので)
と、好意的に捉えるのがかなり難しい感じでした。
おいしい紅茶をたくさん知っていたらまだしも、上記のような経験をして「次こそは!」「たまたまっしょ!」なんて思わないですよね…。
なので、紅茶業界を盛り上げたいとか紅茶を広く知ってもらいたいならば、ケニアのような実力のある茶葉や水出し紅茶を疎かにすべきではないなと、そう思う次第であります。
まとめ
- 次点はエビアン:軟水か水道水=1:1で上記と同じ要領でOK
ということでした。
まぁ、これもカカオっぽい味がするのである意味フレーバーティーっぽいと言えばぽいんですが、ただ水に浸しておくだけでそれが作れてしまう能力の高さは素晴らしいですね。
ぜひダークチョコレートのようなカカオの効いたおいしい紅茶をどうぞ。
チョコの香りがついた紅茶やアールグレイはたくさんありますが、本物のチョコはあんなにブンブン香りはしないのでケニアの方がよりカカオっぽいかと。
まあ、カカオというのも人によるので何とも…ですが、紅茶というカテゴリ全体から見ても、ここまで香りのするものは貴重でありますので、ぜひお試しくださいませ。
ちなみにケニアの紅茶は3月くらいから出回るようで、オレンジペコーがなかったのは時期的なものだったようで一安心。
30年くらい前の茶の本によると
とありまして、もしかして全部CTCにされてしまったのか…?と心配しておりました。
ぜひともこの味を守り続けてほしいですね…。
今年も買います。