old reliable tea

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ストレートティーについて考えるブログ

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昔のトマトへの扱いが酷すぎる件

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トマトの歴史という本を読んでいたら、トマトは昔「ものすごく不快な悪臭がするベリー」「トマトを喜んで食べるのは愚かなごく一部の人々」と思われていたという話(+レシピ)がおもしろかったので紹介を。

 

 

いや、おもしろいというとトマトに失礼なんですが、ものすごい言われようでした。

 

不吉で邪悪な食べ物「トマト」

18〜19世紀ごろの植物学者や料理研究家、医師などがトマトについて何とも辛辣な文献を残しているそうです。

 

トマトとナスは「奇妙でおそろしいもの」だから喜んで食べるのは「ごく一部の愚かな人々」だけ

地面をはうように伸びる習性はいかに不吉だし、茎や葉は生で食べると有毒だった。味や香りはほとんどないくせに酸味は強く、食べごたえがない。生きるための食事としては物足りなかったのだ。

アメリカからやってきた、薬(香辛料)にまみれた料理(を食べる風潮)ほど邪悪なものはない」

トマトの持つ地上のものとは思えない鮮やかさ、果肉の刺激的な味、悩ましげにしたたる果汁。これは聖職者にとって呪うべきものだった。トマトは土にまみれた茶色のジャガイモからはけっして夢想もしないような「情欲をかきたてた」のである。

 

ものすごい言われようですね…

 

ちなみに薬にまみれた料理とは、つまりトマトソースのこと。

 

塩、砂糖、トウガラシなどと煮ていたそうで、食べるという行為を忘れ人を大食いにしてしまうため、当時のカトリック道徳主義者キアリ大修道院長が邪悪と呼んだそう。

 

まあ、当時のトマトは「潰れやすくて輸送に向かず、温暖な気候に適していたため、寒いヨーロッパのトマトは味が悪かったのだろう」「すっぱいぶどうのような味がした」とあるので、あまりうまいものではなかったのでしょうけど、こんなパワーがあったんですね。

 

実際、1900年代に入ってから「こんなに早く普及した食べ物はない」とも書いてあるので、今より味は悪かったがちゃんと調理してやれば十分にうまかったという位置づけなんでしょうか。

 

しかし、当時ヨーロッパは小氷河期なんて言われていたほどに雪が多く、屋外での植物の生育自体が困難だったようで、「とりあえず畑の端っこに成ってたから何でも食べてみよう」という状況にはなかったそうです。

 

さらに

  • 当時は人間の体液が健康状態を左右すると考えられていたため、冷たくて水分の多い食べ物は体に悪いとされていた

 

  • トマトを食べると歯が抜ける、匂いをかぐと気が狂う、通風を悪化させる、おなかを壊す、失神や脳卒中を引き起こす、腰痛や下痢、あるいはもっとひどい状態になる

 

  • マンドレイク(マンドラゴラとも。幻聴、幻覚を起こし、最悪死に至る毒をもつナス科の植物)と同じような扱いだった

 

  • 未熟なときはすっぱすぎて硬いのに、熟れるとすぐにぶよぶよ柔らかくなる(のが気持ち悪かった?)

 

と、未知のものとはそこまで人々を恐怖に陥れるものなのでしょうか…?

 

しまいには、トマトに限らず16世紀あたりは野菜自体が不健康とされていたそうで、フランシスコ・ヌニェス・デ・オリアという人物が、サラダや野菜を食べる人は「顔色が悪く、虹のすべての色が混じったような顔色をしている」と書いていたとのこと。

 

ただ、不健康と言われていますが、富裕層は野菜を食べていたそうです。

 

やはり健康や生活のために研究や好奇心を欠かさなかったのでしょうか。

 

現在はリコピンとかビタミンCが多いことも分かっていますしうまいんで、何ら問題はないですよね。

 

ちなみに、どのくらいトマトが凄いかというと、過去の探検家が持ってたとされる110年モノのトマトの缶詰めを開けたら、全く腐っておらずビタミンDの減衰もなかったとのことです。

 

すごいんですけど、よく開けようと思ったものだ…

 

料理にはたくさんのトマトを

私が件の本を読もうと思った一番の理由が、昔のトマト料理のレシピが載っていたからです。

 

ちゃんとした作り方が知りたかったんですよ。

 

見込み通りいろいろ書いてありまして、例えば鶏肉とトマトの料理「プーレ・クレオール

  • 良質の鶏2羽、コンソメスープ570mlに対し、生のトマト6個、生のピーマン6個、ほかバターやニンニクなど

 

これだけトマトが入ってますが、野菜、鶏を入れてから煮るのが1時間、その後コンソメを入れて20分と、意外とふつうの作り方。

 

トマトソースやボロネーゼだと4時間とか煮て、気合を入れないと作れないレシピもありますからね。

 

続いて「フルーマン家の至高のオランダ風トマトスープ」

  • 4人分でトマト1.5キロ、トマトピューレ缶詰1缶(100gらしい)、じゃがいも・たまねぎ1個ずつ、水とビーフストック適量、ほかスモークベーコンやタイムなど

 

と。

(後で足せるからお好みで。というのは分かるんですが、できればビーフストックの大体の量は書いておいてほしかった…)

 

普段作っているものとベーコンやたまねぎの量は変わらない(鶏2羽はちょっと多いような)ですが、トマトの量が数倍になっていました。

 

調べると出てくるスープなんかだと水1リットルにトマト1個とかですよね。

 

レシピは昔のものも結構あって(プーレ・クレオールは1912年掲載)、当時のトマトは味が薄かったせいでたくさん入っているのかもしれませんが、トマト料理というとこのくらい入れてもいいんだなーという感じですね。

 

トマトスープがイマイチ決まらない!という場合は砂糖や調味料でなくトマトの量を倍にしてみる、よく煮込んでみるのもいいかもしれませんな。

 

他にも、一口食べればアラビアンナイトの主人公の気分になれる、世界でもっとも見事なトマト料理「トマト・ア・ラ・リュシー」アボカドとハッシュドポテト、トマトを交互に重ねてチーズと共にグリルした「サンドイッチ」とかが書いてあります。

 

ただ、レシピ自体は最後のほうに少々載っているだけなので、それのみを目当てに買うのは微妙かもしれません。

 

まずは図書館等でチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

おまけ

↓これらが16〜19世紀までのトマトの印象かも。