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ストレートティーについて考えるブログ

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水出し紅茶で食中毒になる可能性はどこまであるのか?

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水出し紅茶は食中毒のリスクが高いってホント?

私が紅茶をおいしく飲む方法として推奨している冷蔵庫での水出しですが、ちょくちょく見られるのが「水出し紅茶は食中毒のリスクがあって危険!」というお話。

 

(あんまり言うとアレですが)とあるお店の水出し紅茶への見解はじまり、夏場に麦茶で食中毒になったやら何やらといったニュースの話なんかがありますが、我々はどこまで警戒するべきなのでしょうか?

 

 

1.たしかに麦茶は食中毒菌が増えやすいが…

まず第一に、食中毒菌が増えるためには

 

  • 温度(20〜40℃)
  • 水分
  • 栄養

 

の3つが必要だそう。

 

O157などは8℃程度から菌が活性化するそうですが、これらはカテキンによる殺菌効果が認められております。

 

カテキンにはその他食中毒の原因になりそうな大腸菌なんかにも効果があることが確認されていて、テレビなんかでも緑茶や紅茶がいい!と言われている通り。

 

で、ここで気になるのが、水出し茶に関して問題視されている記事・話題のほとんどが「麦茶」であるという点。

 

お茶の健康作用や抗酸化力といわれるタンニンやカテキン、カフェインですが、残念ながら麦茶には含まれておりませんよ。

 

むしろ、カフェインがないから妊婦や赤ちゃんにも推奨されているくらい。

 

つまり、麦茶には殺菌作用がないため、口内の食べかすやどこかからついた細菌が、茶の栄養を素に増えてしまっているわけですね。

 

麦茶に糖分は入っていないですが、体にいいと言われるように栄養や糖類(糖類は緑茶や紅茶にもある)は多く、その上水分が豊富なので菌が増えるには十分な環境ということですね。

 

よって、たいてい常温で放置されるであろう麦茶の水出しが食中毒になる可能性がある!というのは分かります。

 

ならば、紅茶や緑茶は大丈夫そうな気はしますが、もう少しくわしく。

 

2.紅茶や緑茶は水出しでも3〜5時間程度置けば熱湯と同じくらいのカテキンが出る

次に「水出しだとカテキンやカフェインが出ないから殺菌が不十分!」という話を前にされたことがありますが、これも間違いで、茶業研究報告によると常温や少々低めの温度でも最低5時間はおけば熱湯で2〜3分程度抽出したものと同程度のカテキンが出ることも分かっています。

 

簡単に説明すると、エピカテキンやエピガロカテキンガレートなどの4種のカテキンにおいて、70℃で3分よりも40℃で10分の方が全てのカテキンの量が多かったそう。

 

これは緑茶のデータですし、もちろん茶葉にもよりますが、紅茶は緑茶よりもカテキンやカフェインの量が多いので緑茶がOKならば紅茶もOKでしょう。

 

つまり、何が言いたいかといいますと、ふつうにお湯でいれた緑茶でもカテキンの殺菌効果があるならば、5時間以上置いた水出し茶にも同様の殺菌効果があって然るべきだと。

 

ちなみに、「宵越しの茶は飲むな!」とよく言われますが、あれは酸化されやすいカテキンが高温の時間が長いせいで効力を失ってしまうため。

 

カテキンが他の物質の酸化を肩代わりしてくれるそうなんですが、温度が高いほど(その時間が長いほど)酸化、つまり劣化スピードが上がるため1日で悪くなってしまうそう。

 

アレニウスの式

 

なので、相変わらず熱湯でいれた茶はすぐに飲み切るのがよさげ。

 

もう1つ補足しておくと、「カテキンが酸化されるなら冷蔵庫に何時間も置いておくのはダメじゃないか!」とも思うかもしれませんが、こちらの実験によると冷蔵庫では殺菌効果のない麦茶でさえ菌が増え始めるのに4日も必要だったそうです。

 

前述の通り、低温でも活動できるO157なんかもカテキンがやっつけてくれるので、絶対に安心!とまでは言えないものの、少なくとも水出し紅茶が1日2日で雑菌祭りになることはないかと。

 

しかしスポーツドリンクが酸性だから菌が増えにくいというのは意外ですね。

 

3.茶葉が汚染されていたら熱湯だろうが食中毒になる

これはちょっと難しい問題ですが、食中毒で腹を壊したり嘔吐したりするのは毒素が原因であるため、もし水出しでいれて(=殺菌されている状態で)食中毒になるならば、熱湯でいれようが食中毒になる可能性が高いそうです。

 

なぜなら、これは夏祭りのカレーなんかでもよく言われる話で、いくら沸騰させようとも鍋をかき回して空気に触れさせようと菌の種類によっては作り出した毒素が消えないことが分かっているため。

 

黄色ブドウ球菌の毒素は100℃20分でも、セレウス菌は120℃90分でも分解されないそうな。

 

つまり、食中毒になるくらい菌が増えきってしまったらその茶・茶葉は捨てる以外にどうしようもないと。

 

と、こんな話をすると恐ろしくなってしまうかもしれませんが、紅茶協会の本によると茶葉は乾燥させる際に100℃近い熱風を吹きかけて乾燥させるそうです。

 

例え加工前に常在菌がついたとしても、70〜80℃で1分加熱すればたいていの菌は(有害になる前に)死滅するようですし、何より缶や袋に詰めた後は水分がないので、まぁ、容易に増殖できる環境ではないんじゃなかろうかと。

 

という感じでした。

 

まとめ

 

  • 麦茶には殺菌作用がないため、冷蔵庫で作るか熱湯で作ってすぐに飲み切る
  • 紅茶や緑茶は3〜5時間程度でもふつうにいれるお茶と同じくらいのカテキンが得られる
  • 水出しで食中毒になるくらい菌が繁殖しきって汚染されていた場合、いくら熱湯で煮ようがカテキンを入れようが食中毒になる可能性が高い
  • 紅茶はちゃんと熱風で乾燥させているので(おそらく)菌は少ない

 

という感じでしょうか。

 

以前に「食中毒になる飲み方を広めるな!」と言ってきた人は、おそらく麦茶と同じようなイメージで言ってきたのかもしれませんが、緑茶と紅茶に関しては大丈夫かなと。

 

むしろ、水出し茶に反対している人がスーパーの剥き出しの惣菜や揚げ物なんかを平気で買っていたら、「どっちが食中毒のリスクが高いんだ」という話になりますからね。

 

過去にトングが汚染されていて…なんて事故もありましたし。

 

また、どうやら「サンティー」なる、直射日光に晒して作る水出し紅茶もあるようですが、何度も言うように私が推奨する水出し紅茶は基本的に冷蔵庫で作るものであります。

 

たま〜に常温の水出しをすすめることもありますが、それも長くて24時間ですし…。

 

もし何か問題があったにしても、それは「容器が清潔ではなかった」とか「古い水を使った」「生肉の飛沫が飛んでしまった」という感じで、紅茶が直接の原因ではないかと思います。

 

 

ということで、絶対に安心!とまでは言えないものの、水出しでも思ったよりカテキンやカフェインはたくさん出てますんで、さほど神経質にならなくてもよろしいのでは?というお話でした。

 

注意するに越したことはありませんが。

 

 

tanabu.hatenablog.com