わりと真剣にダージリン ファーストフラッシュの役割について考えてみる
初物が高値で取り引きされる文化のある日本だからなのか分かりませんが、「新」「初」と呼ばれる物が現在でも高く売られております。
また日本ではなく海外の商品が中心ですが、紅茶もダージリンのファーストフラッシュと呼ばれる春摘み茶は高いです。
ファーストフラッシュはダージリンのみならず紅茶全体から見ても、特に苦みが際立って強いのが特徴ですね。
私はあまり好きではないので「あの味が好きな人は好きなのかなー」「世界は広いからなぁ」と思いつつも過ごしていたんですが、偶然にも「もしかしてファーストフラッシュが高い理由はこれか?」と思うようなものを見つけました。
私は落語が好きで立川志の輔さんの作品をよく聞くんですけど、あるとき「御神酒徳利(おみきどっくり)」という回の中で「流行語大賞の表彰式」について志の輔さんがお話ししていた場面があるんですよ。
1998年?の話らしいんですが、ざっくり言いますと
佐々木主浩投手と田中眞紀子、パイレーツの4人をカメラに同時に収めようとすると物凄いギャラが発生するが、賞をあげるとタダで集まってもらえる。
そして、現代用語の基礎知識が選ぶ…と書くことによって新聞や雑誌、テレビなどのあらゆるメディアに宣伝することができる。
ということだそう。
その手があったか、という感じがしますね。
と思って見ておりますと、今度はたまたまマグロやカニの初競りが高額な理由!みたいな記事を見つけまして(表彰式の話を聞いていなければスルーしていたかも)。
結論から申しますとこれもどうやら宣伝や広告になるからだそうで、確かに「どこの誰が落札!」なんて大きく書かれたりテレビで放送されたりしたらいい宣伝になりそうな感じはしますね。
「あっ、あのマグロを買ったってテレビに出てた寿司屋だ」みたいな。
そしてそこから、もしかしてダージリンのファーストフラッシュが高いのも「高値がついたら全世界へ向けた宣伝になる」みたいに目的は同じなのかしら?と感じた次第であります。
例えば、現在「紅茶といえばキャッスルトン(の名を挙げておけばツウっぽく見える)」みたいなところがあるわけですが、そう考えると宣伝としては功を奏しているのかもなー、と。
「キャッスルトンの新作入荷!」「最高峰!」と書けば伝わっちゃいますからね。
ちなみにキャッスルトンでも100g1000円のダージリンとかはあるんで、我々庶民が手にするのは畏れ多いなんてことはないと思います。
逆に、ブラインドテイスティングで「結構おいしい番茶だな」と思ってシールを見たらダージリンオータムフラッシュ50g2600円だった、みたいなこともありますし…。
100均の全く同じ色の茶筒を4つくらい用意して、ルピシアの番茶、高いダージリンのオータムフラッシュ、まあまあのアッサム、ほうじ茶と移し替えておくんですよ。
そしてランダムにどれかを取って茶をいれ、飲んでから茶筒の底に貼ったシールと答え合わせ…みたいな。
何回も飲んでいると味を覚えてしまうので時間を置いてやるべきですが、意外と楽しいですよ(笑)
それはいいんですが、宣伝のために高値で取引するのが通例になっていると考えると、100g5000円のダージリンが思ったほど味がしない理由も分かるような気がしてくるのであります。
「バーンとデカく宣伝されてた茶目的で来たけど、ついでにその店で買ったこっちの方がうまかった!また行こう」みたいなこともあるので、良い悪いは一概に言えないと思いますが…。
ただ、やはり好みが分かれるというか人を選ぶところが多分にあるため、今回はダージリンファーストフラッシュについてのお話を。
甘み・うまみは誰でも好きだが、苦みはそうではない
ファーストフラッシュってどんな味?と聞かれて一番近い物を挙げるとしたら「おーいお茶 濃い味」でしょうか(最近は飲んでいないのでおーいお茶の味が変わった可能性がありますが)。
甘さはほとんどなく「本当に渋みを味わうためのお茶」という感じなので、果たして紅茶と言っていいものかどうか…。
「茶は苦くないといけない」とか「甘い茶なんて気持ち悪い…」みたいな人にはいいかもしれませんが、みなさんご存知の通り、苦みというのは甘みのように万人が好むものではないため、慣れてもおいしく感じないこともままあるのが悩みどころ。
多くのサイトでダージリンが「薄くいれることを推奨している」ことからも分かるように、「渋みを味わうもの」と言いつつもやはり飲みづらいのだと思われます。
1分や2分であれば渋みは抑えられますが、それだけうまみも少なくなるでしょう。
これは緑茶の実験ですが、95℃〜100℃2分で「カフェインのほぼ100%、タンニン(カテキン)の約70〜75%」が出てしまうことが確認されています。
対してアミノ酸や茶のうまみと言われている成分は、短くとも4〜5分程度は置かないと感じることすらままならない程度しか出ないことも分かっているんですよ(感じないのは渋みが強すぎるせいもある)。
つまり、アミノ酸は低温でも置けばしっかり出るんですが(90℃でも60℃でも50℃でも10分置けばだいたい同量になる)、カフェインとタンニンは80℃を超えると「待ってました!」とばかりにどんどん出てくる、と。
そして出てきたが最後、砂糖やミルクを入れるしかないと(ファーストフラッシュにミルクや砂糖は合わないですが)。
だから、渋みを出さないような低温や水出しでいれるとおいしいと感じやすいんですね。
出てきた渋みをカバーできるほどの甘みやうまみはないでしょうから…。
よって、確かにダージリンのファーストフラッシュは高いんですが、その値段の高さは少なくともおいしさの保証ではないのでは…ということが言えるのではないかと。
米で例えるなら、高い紅茶を見るとコシヒカリをイメージしてしまいますが、実際は人件費やら出張費やらで値段が倍の普通の米だった、みたいな。
日本だとあんまり無さそうな話ではありますが。
ファーストフラッシュは好みで決めてしまおう
ということで結局ファーストフラッシュをどうするか?と言いますと、
- 既に買ってしまった方は「食事中に飲むお茶(マテ茶亜種みたいな)」として肉料理やパスタ、カレーと共に飲んでいただくのがおすすめ
- 飲んでみようか迷っている方は安いダージリンから試していただくのがおすすめ
です。
どうやら、タンニンは油とそれに付随するタンパク質を固めて流してくれるため、渋み・苦みの強いお茶は口内をリセットする目的ならば適役になります。
さらにここでファーストフラッシュを使うともう1ついいことがありまして、紅茶の味や香りが弱い(草っぽい味はしますが)ので、料理の味を邪魔しないんですよ。
本当に「さっぱりする」といいますか。
水や普通のお茶とは違った爽快感があります。
それに、おそらく値段を知っているから「この値段でこの味なのか…」となるだけであって、普通にパスタとか揚げ物と一緒に出てきたら結構合うというか、問題なく受け入れられるんじゃないでしょうか。
付け合わせの茶として出すには高すぎるかもしれませんが、ペペロンチーノとかにいいですよ。
さて、次のダージリン ファーストフラッシュを買おうかどうか迷っている方は、おそらく最も低価格でファーストフラッシュ感を味わえる「メルローズ クイーンズダージリン」をどうぞ。
同価格帯か2000円以内でこの味がするのはメルローズくらいじゃないでしょうか。
前述のように油の多い食事のお供にしてもいいですし、この味が好きになる人もいるかもしれません。
ちなみに私もこのメルローズは案外嫌いではなくて、運動しすぎて疲れた時とか体調が優れない時には秘薬感覚で飲んでいました。
体にいいものを飲んでいるような感じですね。
もしかしたら、メルローズはあんまり高くないので余計なことを考えずに飲めるのがいいのかもしれませんね。
ということで、ファーストフラッシュは「どうすればおいしくなるか」というのではなく「こういう味なんだ」と思って飲んでいただくのがよいかと。
本当に味が変わりませんので。
まとめ
- ファーストフラッシュが高いのは多分味ではない
- 多くの紅茶は渋みの中に甘みがあったり、渋みを出さないと驚くほど香りがよかったりするが、ファーストフラッシュは苦み・渋みがメインで、いれ方を変えてもあまり味が変わらない
- 既に買っていてどうにか消費したい方は、紅茶としてではなくマテ茶とか黒烏龍茶のような感覚で飲むのがおすすめ
という感じでした。
名前は紅茶でありますが、あまり紅茶と認識して飲むべきではないと言えるのではないでしょうか。
ちなみに、過去に私が飲んでファーストフラッシュっぽかったダージリンは
- ウェッジウッド ピュアダージリン
- トワイニング ピュアダージリンティー(セカンドフラッシュにファーストフラッシュの苦みを足したような感じ。ファーストフラッシュかどうかは不明)
- メルローズ クイーンズダージリン
- マリアージュフレール クイーンビクトリアFTGFOP
- TWG FTGFOP
ですね。
これら↓
「ちょっと違うぞ」と覚えておいてもらえればよろしいのではないかと。
余談ですが、FTGFOP(ファイネスト・ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジペコー)は茶の等級を表す言葉ですが、一時期イギリスでは「Far Too Good For Ordinary People(お前ら一般人にはあまりに良すぎる茶だ)」なんてジョークが出回ったそう。
非常に底意地が悪い感じがしますね。
まあ、自分がおいしいと思う紅茶を飲むのがよさそうです。
そして、とりあえずダージリンのファーストフラッシュは「王道」とか「ツウを唸らせる逸品」とは思わないのがよろしいかと思いますね。
ご参考までに。