水出し紅茶の味が同じにならない!問題について何か解決策はあるのか?
今回登場するお茶
・セレクティー ケニア
・トワイニング レディグレイ
・ルピシア パラダイス
今回紹介するいれ方
・エビアンと軟水を使った水出し
- 同じ条件、同じ温度、同じ茶葉の量でやっているにも関わらず、水出し紅茶の味が同じにならないのはなぜ?
- 1.エビアンと軟水が実は混ざっていない
- 2.茶葉の大きさや太さによって動きが変わる
- 3.後半は味が薄くなる
- ということで、現状最善の策は「500ml用ポットならば500ml作る、1リットル用ポットならば1リットル作る」こと
- まとめ
同じ条件、同じ温度、同じ茶葉の量でやっているにも関わらず、水出し紅茶の味が同じにならないのはなぜ?
実は結構前から感じていることではあるんですが、同じ条件、同じ温度、同じ茶葉の量でやっているにも関わらず、水出し紅茶の味が同じにならないことがあります。
エビアンと軟水を混ぜたもの、どちらか単一のもの(はあんまりおいしくないですが)の両方とも起こることでして。
理由はさまざまあるかと思いますが、まあ、農産物ではありますし、茶はブレンドされているものがほとんどなので、同じ商品でも上と下では茶葉の分布が違うことも考えられます。
アッサム、セイロン、ダージリンのブレンドならば上にセイロンの茶葉が多いこともあるかもしれませんし、とある紅茶がおいしい!というのは実は特定の茶葉が上に偏っていたから…なんてこともあるかもしれません。
ということで.とりあえず原因と思えそうなものを羅列して実験してみました。
その日の水の微妙な差とか、空気や温度、お茶の機嫌などコントロールできない要素は仕方ないとして、意外なところに落とし穴がある可能性もありますからね。
思いつくものとしては
- エビアンと軟水が実は混ざっていない(どちらを先に注ぐかで抽出度合が変わっている?)
- 茶葉の大きさや太さによって動きが変わる(ポットの形によって動きが変わる?)
- 細かい葉が下に、ドライフルーツやオーナメントは上に残りやすいため後半は味が薄くなる
とかですかね。
さて、紅茶というのは全くコントロールの利かない領域なのでしょうか。
1.エビアンと軟水が実は混ざっていない
世にはセパレートティーなるものが存在します。
砂糖や塩を溶かした水もしくはジュースと紅茶では重さが違うため、重たい液→軽い液と注ぐと層ができるというアレですね。
で、エビアンにもミネラルが溶けているため、もしかするとセパレートティーのようなことが起きているのでは…?と思い同じ量を測ってみたところ、
- 水道水:250g
- エビアン:255g
でした。
確かに水道水とエビアンでは重さが違うようで、その差は2%くらいある模様。
次に適当な絵の具を用意し、エビアンと軟水にそれぞれ溶かしてから出来るだけ静かに注ぎ、セパレートティーのように層ができるものかどうかを確認しました。
エビアンはカーマイン、軟水はセルリアンブルー。
それを混ぜてみたところ…
無情なり。
ということで、2%くらいの重さの違いでは層にはならないようですね。
ちなみにこれは水出し紅茶の条件と同じく48時間置いた後の姿であります。
つまり、
ということがいえましょう。
2.茶葉の大きさや太さによって動きが変わる
これはパラダイス、ケニア、レディグレイといろいろ試していたときに気付いたんですが、それぞれの茶葉によってほとんど沈んだままだったり上と下に分かれたりと、挙動に結構差があったりします。
例えばですが、パラダイスとケニアは下に沈んでいる茶葉がほとんどで、レディグレイは上に8割くらいの茶葉が停滞していました。
ケニア(10時間目)
レディグレイ(見にくいのでいれたてを用意しました)
ケニアは冷蔵庫でおいた物ですが、48時間経っても両者ともに茶の分布は変わらず。
で、いれる前のそれぞれの茶葉の大きさを見てみますと
ルピシア パラダイス(茶葉に水を入れた際の分布はケニアとほぼ同じで、上2、下8程度)
となっていて、パッと見そんなに変わらない感じはしますが、パラダイスは明らかに細長く、ケニアはそれより控えめながらも細く長く、レディグレイは横に太く短い茶葉が多いように見えますね。
まあ、多いように見えるだけであって実際に数えてみると違うかもしれませんが。
で、パラダイスは放っておくと(下に溜まっているためか)全体的な茶液の色は午後の紅茶のレモンティーより薄いくらいでとても甘くておいしいお茶になりますが、あるとき抽出が効率的になることを願って上下を返したことがあります。
スプーンでかき混ぜて。
すると、色はほんのり濃くなった(午後の紅茶のレモンティーと同じかやや濃いくらい)んですが、苦みが強くなり甘さをほとんど感じない茶になってしまったんですよ。
パラダイスの水出し紅茶を作って7回目のことで、これまで失敗したことはありませんでした。
つまり
- 茶葉が下に溜まったまま36時間経過させた紅茶
- 何時間かおきにスプーン等で茶葉を上下に循環させた紅茶(今回は20時間の時点で1度混ぜた)
は、後者の方が明らかにマズくなったということですね。
もちろんこれは「渋みがあってはいけないパラダイスだから」というのもあるかと思いますが、ただ1回混ぜただけでここまで味が落ちるものか…と驚いた次第であります。
とりあえず、苦み・渋みが嫌ならば混ぜることなく48時間置くのがよさそうですね。
ちなみに抽出中に混ぜるのがあまり推奨されないだけなので、一番最初に水や茶葉を入れた段階では混ぜても大丈夫です。
どうやら茶葉の分布は48時間置いても変わらないようで、上に浮いた茶葉が水に浸かっていないと48時間後も同じく浸かっていないままになり実質3/4くらいの茶葉で抽出したような感じになってしまいますので、むしろ最初は混ぜたほうがいいかもしれません。
しかし、混ぜるとおいしくなくなるというのは
- 茶の香りやうまみは時間さえかければどうやっても出てくる
- かき混ぜることによって茶葉の周囲の濃度が薄くなってタンニンやカテキンなどのいやな部分が出過ぎてしまう
という感じなんでしょうかね…?
どちらにせよ「濃くなる」というよりは「苦く・渋くなる」という感じであります。
「同じ時間放っておいて、かつ混ぜたら(色は濃くなったが)味が悪くなった」ということは、思った以上に苦渋味が持つ甘さやうまさを隠すパワーは強いということなんでしょうか…?
3.後半は味が薄くなる
先述のパラダイスなんかもそうなんですが、パパイヤやクランベリーのドライフルーツは結構サイズが大きいため、袋を意図的に振った混ぜたりしなければ比較的細かめの茶葉が下に、ドライフルーツが上に多く分布してしまうこともあるかと思います。
つまり、袋や缶の最初のほうはオーナメント(花びらやドライフルーツなど茶葉以外の装飾品)が多いから香りやうまみは濃くなるが、後半になるにつれてサイズの小さいもの=茶葉の割合が多くなるため香りが弱くなるか苦みが増す可能性がある…と。
ここでもう1つ大事なことがありまして、パラダイスにはドライクランベリー、ドライパパイヤ、ドライマンゴーと入っているわけですが、ふつうのドライフルーツとはちょっと違うんですよ。
というのも、私も知り合いでも作っている人がいるんですが、ドライフルーツはコンポートにしたフルーツをソフト身欠きのように5〜8分乾程度にして作っているそうです。
簡単にいえば缶詰のフルーツを干したような感じですね。
まあ、コンポートにするのがいいか悪いかという話ではないんですが、お砂糖で煮るためよくも悪くもみんな似たような味になってしまうんですよ。
食べた感じそうですよね。
しかも香りが強いフルーツだと洗浄やメンテナンスが大変だそうなので、香料を付けたものや香りを活かしたものは作りづらいそうなんですね。
が、パラダイスに入っているドライフルーツはコンポートにしたものほど甘くはない上に香りがしっかりついているため、ふつうの紅茶よりは茶液への貢献は大きいんじゃなかろうかと。
つまり、フレーバーティーに入っているのが
- ただの乾燥させたフルーツ(食べてもあんまり味がしないとか)や砂糖で煮たフルーツなのか
- 香りがしっかり付いているドライフルーツなのか(パパイヤやマンゴー自体の香りとは若干違うが、袋を開けた時の香りと相違ないとか)
によって違うかもしれない、ということですね。
もっというと、前者のドライフルーツが入っている紅茶なら気にしなくてもいいけど、後者の場合はドライフルーツの数が香りのよさを微妙に左右しているかも…?と。
全体としてそこまでたくさん入っているわけではないですが、パラダイスが失敗した時はドライパパイヤとドライマンゴーが割合少なかったような感じがあったので、そのせいでもしかしたらちょっと香りが弱まった可能性がありますね。
2袋買って、最初の1袋目を飲みきる際はこんなことにはならなかったので、本当に「もしかしたら」レベルではありますが…。
ただ、もしみなさんがフレーバーティーを買う時に「ドライフルーツや花びらにめちゃくちゃ香りがついているが、茶葉はそうでもない」「おいしいんだけど、おそらく茶葉以外の味要素が大きい」という商品に出会うかもしれないので、参考にしてくだされば。
ということで、現状最善の策は「500ml用ポットならば500ml作る、1リットル用ポットならば1リットル作る」こと
エビアンと軟水が混ざらないのは先で述べた通りですが、ならば同じ茶でも分布によって味が変わるものかどうかも確かめてみました。
レディグレイをそれぞれ500ml用ポットと1リットル用ポットに入れ、茶葉の量も水の量もエビアンと軟水の割合もまったく同じで作ってみました。
つまり、茶葉は大さじスプーン3杯半、水は450ml(茶葉込みで500mlになるように)、エビアンと軟水は1:1にセットしまして、違うのは
- 500ml用は茶葉が上7下3(か上8下2)くらいに分かれている
- 1リットル用は下側が横に広いため全ての茶葉が接近している
という点のみ。
まあ、紅茶がおいしい理由はたくさんあるので、飲んでもどの成分が多いとかはよく分からんのですが
- 茶葉が上にあればうまみが茶葉の循環(水出しでは大した循環はしてないですが)と共に下に降りてくるせいで、全体が同じ濃さになるまでどんどん味が出てくる
- いやいや、むしろ、茶の味は下には降りてこないので、上がある程度濃くなればそこで抽出はほぼ止まり、全体としては薄くなる
などが考えられますね。
で、結果どうなったか?と言いますと1リットル用ポットに500ml分作った方が濃い紅茶になりました。
上下に分かれているものではなく、茶葉が密接しているほうが味の濃い茶になったということですね。
が、ここで注目すべきポイントとしては、
- レディグレイはやや苦みがあった方がグレープフルーツやナツミカンが類推されておいしい気がする
- 単体で飲むと「普通の味」という感じだが、飲み比べると明らかに濃い
という点で、レディグレイは渋みがあったほうがしっくりくる茶だから濃いと感じただけで、普通の茶は単に苦くなる、という感じがしました。
つまり、葉のデカいフルーツティーや香りのよいパラダイスやエディアールの4レッドフルーツ、マルコポーロなどの渋みを可能なだけ出さずに香りを移したい紅茶は、特にいじったりせずに大きめのポットで、茶葉が上下に分かれるくらいのたくさんの量を作ったほうがおいしい可能性があるということですね。
500ml用ポット(満タンだと600mlですが)ならば500ml(600ml)作る、1リットル用ポットならば1リットル作るという感じですね。
500ml欲しければ1リットル用ポットに500mlではなく、500ml用ポットに500ml作るべし…。
ややこしいですが。
もしかしたら「紅茶を作るときはたくさん作ったほうがおいしい」というのも、ここから来ているのかもしれませんね。
まとめ
- エビアンと軟水は静かに注いでも混じってしまうため、どちらを先に注ごうと大した差はない
- 茶葉によって上に留まったり下にほとんど沈んだりするが、下手に混ぜない方がよさそう(何時間かおきに混ぜたからといっておいしくなったりはしないっぽい)
- ドライフルーツや花びらにいい香りがついた紅茶は装飾のおかげで上が濃くて、細かい茶葉のせいで下が苦い可能性がある(何回にも分けて作ると運悪くドライフルーツが入ってないかもしれないので、1度にたくさん作ったほうがいいかも?)
- 香りが非常によくて葉の大きなフレーバーティーは500ml用の小さいポットにするか1リットルくらい作ったほうが(つまり、茶葉を密接させないほうが)いいかも
ということでした。
まあ、理由は不明ではありますが、とりあえず水出し紅茶は冷蔵庫に入れたらそのまま48時間放置したほうがよい、といった感じですかね。
はっきりとしないのがモヤモヤいたしますが、とりあえずめっちゃ香りのよい紅茶は
- 500ml用ポットならば500ml作る、1リットル用ポットならば1リットル作る
というのがオススメ…と言えるでしょうか?
1リットル用ポットに500ml作ると苦い茶になる可能性があるので、(ある程度の誤差は仕方ないとして)下手にいじらぬよう注意しながら作っていただくのがよろしいかと。
また、今回実験してみてやはり200mlあたりに茶葉1杯は薄いかもなーと思ったので、「200mlあたりに1杯+1杯」くらいがいいかもしれませんね。
ということでした。