小話:ダージリンは本当にマスカットのような味はするのか?/茶を見た目で判断するのは下等 など
マスカテルフレーバーの意味は「ワインのような複雑な香り」
よく「マスカットフレーバー」「マスカテルフレーバー」「紅茶のシャンパン」と言われるダージリンですが、本当にそんな味はするのでしょうか?
結論から申し上げますと、マスカテルフレーバーというのは「複雑な香り」という意味だそうです。
というのも、世にはモスカテル(マスカテルとも)ワインなる物があるわけですが、ある地域の紅茶農家やテイスターが「まるでワインのような複雑な香りがする!」という意味で使ったという話があるんですよ。
「ワインのような」と言っても、香りが複雑で非常に豊かだ!というのであって、ワインのように甘くて、ハチミツやヘーゼルナッツのような香りがあって…という話ではないと。
同様に「紅茶のシャンパン」も本当に似たような味がするのではなく、シャンパン=香りが豊かな物の代名詞だそう。
「彼はIT業界のエジソンだね!」みたいな。
なので、マスカテルフレーバーはマスカットのような味がする紅茶でもなければ、決してシャンパンのような味がする紅茶でもなく、香りが複雑で味わい深いみたいな意味ということですね。
非常に誤解を招きやすい表現ではありますが。
まあ、正味な話、本当に紅茶がマスカットやシャンパンのような味がしたらミルクや砂糖を入れる文化にはならなかったと思うので、むべなるかな。
ただ、紅茶の味の評価で「真鍮のような(不快な金属味)」「ビスケットのような(火入れが完璧なときにできる、まろやかな香り)」「麦芽のような(濃厚なアッサムの味)」という中に繊細なダージリンを表す「マスカットのような」という表現がある模様。
これも「本当にマスカットのような味」なのか「マスカットのように香りが深い」という意味なのかは不明。
フォションのダージリンにはマスカテルとも言えそうな甘い風味がありましたが、一方で、どの本を読んでも「ある程度以上のダージリンでなければマスカテルフレーバーはない」とも書かれていないので、どれが本当なのか…。
紅茶がワインやマスカットの味がしないことだけは事実ですが。
茶を見た目で判断するのは下等である?
私も見た目というか、パッと見で判断されて困った経験は数えきれないですが、茶にも「見た目で判断するのはよくない!」という話があるようです。
これは8世紀頃の中国・唐で陸羽という人物が記した「茶経(ちゃきょう)」という書物にでてきます。
茶経いわく
光(つや)があって黒く平らなのを嘉(味がいい)とする者は下等な鑑定家だ。
皺があって黄色く凹凸しているのを佳(すぐれている)とする者は次等の鑑定家だ。
どれも嘉とし、どれも不嘉とするものが上等な鑑定家である。
なぜなら、膏(あぶら)が外に出ているものは光があり、内に含んでいれば皺がある。
日をおいて製したものは黒く、その日に製したものは黄色であり、蒸して圧すれば平らになり、圧が緩めば凸凹になる。
これは茶でもほかの草木の葉でも同じことだ(だから茶の良否の決定にはならない)。
茶の嘉・不嘉は口伝による(つまり、昔からそう言われてきただけ)。
ということだそうで、要は「見た目はあくまでどう保存したか?どう作ったか?が分かるだけであって、味は飲んでみるまで分からんぞ」という感じでしょうかね。
確かに、細かい茶葉は苦渋味が出やすかったり大味だったりするような感じがしますが、フォションのモーニングなんかは細かめの茶葉ですからね。
大きい茶葉でもおいしくないものはありますし。
心理学でも「スッと下に目線を逸らしてしまう」なんてのがありますが、あれも好意があって恥ずかしいからなのか、第一印象が好みじゃなかったから距離を置きたいのか、自分の嫌いな奴に似ているからビビっているのか、そもそもそういう癖があるのか、は分からないそうです。
まあ、「飲んでみるまで分からん!」というよりは「皺や光があった方が上等だ!」と言った方がアドバイス感があるというか、専門性が高い感じはするので受け入れられやすいのかもしれませんな。
いろいろと科学が進んだ現在であればある程度見た目で判断がつくこともあるかもしれませんが、「うまいかどうかは飲んでみるまで分からんぞ!」というのは、これからも忘れぬようにしていきたいところです。
続・紅茶の水って浄水器にかけた方がいいの?
過去にいただいた質問の中で「紅茶の水は浄水器にかけた方がよいのか?」という話がありました。
「ふつうに飲めているなら必要ないかも?」と回答したものの調べても答えは出てこないわけですが、気になる話を見かけたもので。
というのも、お茶に使う水に蒸留水は最も適さないと言われているんですが、その理由は「お茶の味を全て抽出しきってしまうから」で、それをミネラルやら水の成分やらがまろやかにしてくれるんだそう。
これは水道水に含まれる程度のミネラルでもよいそうで、やっぱりお茶成分100%は飲みづらいようです。
以前ミネラルが苦渋味を無害な塩(えん)に変えてくれるという話を書いたことがありますが、何となくそれと似ているようなお話ですよね。
また、過去にミネラルが多いと茶の成分が出にくくなり、結果的においしくなるとも聞いたことがありますが、分からず。
ということで、とりあえず普通に飲める水ならば浄水器にかける必要はないものの、もし浄水器にかける場合はミネラルを除去しないようにした方が紅茶はおいしくなると言えそうです。
どのミネラルが紅茶や緑茶をおいしくするかははっきり分からないそうなんですが、あった方が絶対によいとのこと。
そうなんですね。
ちなみに今回調べて分かったんですが、私の住んでいる地域は硬度が45ppmでした。
はっきりと45とはいえないんですが、浄水場が3カ所ありまして、他は硬度が150ppmとか130ppmでやかんや製氷器に結晶ができるそうなんですが、かれこれ20数年生きてて見たことがないもんで、45ppmかなと。
「もしかして硬度150ppmで作った茶を軟水として紹介していたのか…?」とちょっと不安になりましたが、硬度がはっきりして一安心。
コンビニのミネラルウォーターで代用してもそんなに味に変化はないですし。
まあ、このサイトのいう水道水は硬度45ppmくらいで作ってるんだな、とでも認識していただければ。
という感じでした。